Q)『口呼吸』ってどの様な状態でしょうか?
A)人は、普通は鼻で空気を吸って、鼻から吐きます。そんな事は当たり前のことだとお思いでしょうが、最近は口から空気を吸って吐く人が増えてきました。これを口呼吸(こうこきゅう)と言います。いつも鼻が詰まっている人、いつも口を開けている人、唇が渇きやすい人、ノドが渇きやすい人、生臭い口臭がある人は特に要注意です。口呼吸は、自分では気づかない場合も多いので注意が必要です。
どの位の割合の方が口呼吸をしていますか
A)正確なデータはありませんが、かなりの方が口呼吸という状況です。
Q)日本人に口呼吸の方が多いと言うことでは
A)最近、街を歩いていると、若い人を中心に口が常に半開きの人が増えてきています。世界的に見ても日本人は、口呼吸する人が多いという報告もあります。その原因の一つに、最近は離乳の早いことが挙げられます。生まれたばかりの赤ちゃんは、鼻でしか呼吸ができません。そして母乳やミルクを飲んでいる間は鼻で呼吸をする必要があるわけですが、そして離乳が早すぎると、口で呼吸をすることが習慣化してしまうケースが多いわけです。
Q)おしゃぶりを口に入れていればどうなんですか。
A)
確かに、小児喘息もおしゃぶりで治ると言う事例もあります。4歳ぐらいまでおしゃぶりを使用していれば、鼻呼吸が定着し習慣化します。欧米では、口呼吸の弊害が早くから指摘されており、3、4歳まで子どもにおしゃぶりをくわえさせることが常識とされているそうです。しかし、これはこれで歯並びが悪くなったり、精神的に良くないという問題もあります。
Q)よく犬が口で「ハー、ハー」息をしていますよね、あれはどうなんですか。
A)あれは、口呼吸しているのではなく、犬には汗腺がないため、舌で体温を下げる、いわばラジエーター代わりの行為で、呼吸自体は鼻でしています。
それから、どんなに口呼吸する人でも、口呼吸しない瞬間があります。食事をしている時と水を飲むとき時など、口に物を入れているときは、口呼吸をしないのです。
人間以外の哺乳類は口呼吸をしないんですよ。ほ乳類の中で、人間だけが話すことができます。この話すことによって口呼吸が可能になり、そしてその口呼吸のせいで、人は他の哺乳類にはない色々な病気にかかります。
Q)口呼吸でいろいろな病気になるのですか。
A)当たり前のことですが、人は呼吸を鼻でして、話をしたり食べ物を食べたりするのは口でします。その口で呼吸するのですから、いろいろな弊害が出てきます。口は呼吸器としての役割を持たず、それぞれ別々の役割が与えられているために、様々な健康上の障害が起こってきます。
Q)口で呼吸しても鼻で呼吸しても同じじゃないか、と思うのですが。
A)
それでは、始めに鼻の役割を考えてみましょうか。鼻は、
第一に空気清浄器の役割があります。鼻毛や鼻の奥にある繊毛は、埃や雑菌やウィルスや花粉などをシャットアウトします。
第二に加湿器、加温器の役目をし、粘膜で雑菌、ウィルスを防いだり、乾いた空気、冷たい空気が直接肺に入らないようにします。
第三に匂いを感じます。
ところがそんな鼻の働きに頼らずに口呼吸をしていると、慢性的な細菌感染状態となり体全体の免疫機能が極端にダウンし、風邪をひきやすくなったり、喘息、リウマチ、花粉症、アレルギー、アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患や、肺炎や腎炎も引き起こしやすく、さらに糖尿病や高血圧症、白血病、悪性リンパ腫、潰瘍性大腸炎などの原因にもなると言われています。また東京大学の西原克成先生は『口呼吸をしていると、片方だけで物を噛む「片がみ」や横向き寝を促し、姿勢や骨格のユガミまで連鎖する』と話されています。
Q)口呼吸しているかどうかを、どうやって確認したらいいのですか。
A)簡単な方法があります。鼻の下に薄いティッシュを細長く切り裂いて、付ける部分にちょっとだけ水で濡らし、貼り付けます。口呼吸をしていれば口の前のティッシュが呼吸に合わせて口の中に入ろうと内側に動きます。 お子さんの場合は、テレビを見ている時や遊んでいる時に口が開いていないか見てあげる事ですね。
Q)口呼吸は歯にどのような影響を与えますか。
A)口呼吸だと唾液が分泌されてもすぐに乾いてしまうので、再石灰化ができなくなり、むし歯や歯周病を進行させてしまいます。また口呼吸で、長い時間、口が開いていると、口の周りの筋肉が緩み、前歯は舌の弾力のある力で段々押し出され前に出て、上顎前突や開咬の状態になり易くなります。顔つきはだらしなく、また貧相に見える様になって行きます。舌の位置がノドの方に下がるために、いびきをかきやすくなります。更に舌が下がると気道を塞ぎ、睡眠時無呼吸症候群の危険もあると言われています。舌が乾燥することにより、味覚が鈍ります。最近頭脳の発達にも関係するという報告もあります。口臭の原因にもなります。そうですよね、口を開けて呼吸したら、当然、何らかの口臭はしますよね。私は、口呼吸で口臭をしている患者さんに対して「鼻呼吸をしてください」と話します。すると「鼻がつまってできません」とか「苦しくてできません」とい答えが返ってきます。
Q)特に花粉の時期にはダメですね。
A)これでは、患者さんは困りますよね。しかし、患者さんの方にも大きな誤解があります。鼻呼吸はしんどい、酸素不足になる。苦しい・・という訴えです。でも、実際には、そんな人でも食事をしている時や飲み物を飲む時など、自然に苦痛なく鼻呼吸をしています。苦しく思うのは意識するからです。決して酸素不足になったりしません。なんとなく、苦しく思ったり、しんどく思うのは、ちょうど右利きの人が左の手で字を書くような感じです。
Q)口呼吸はどうやって治すのですか。
A)口呼吸病の治療は、いたって簡単です。口で呼吸しないで鼻で息を吸うという普通の状態に戻せば良いのです。人間の体は、息は鼻でするようにできています。口で苦しくなるまで息を吸ってください。どのくらい吸えますか?次に鼻で吸ってください。口で吸うよりも長くどんどん吸えるような気がするはずです。実際、口呼吸よりも鼻呼吸の方がたくさん空気が吸えます。
Q)具体的にはどうするのですか。
A)東京大学の西原克成先生は「ガム療法、あお向け寝、30回咀嚼」という矯正法を提唱しています。口呼吸を治すトレーニングとして、最も簡単なのは、キシリトールガムなどの無糖のガムを噛むことです。
鼻呼吸をしながら、口を閉じて(ガムを)噛み癖でない方でリズミカルに噛むことにより、顔のひずみが少しずつ改善されていきます。早期に離乳した子は、母乳を吸引するときに鍛えられるはずの口の筋肉が十分に発達せず、口を結んでいることが苦手で、どちらか片方の歯だけで食べ物を噛む癖がつき、そちら側を下にして眠るようになる傾向があります。だから低い枕で仰向け寝です。食事の際には、両方の歯で食物を30回以上、よく咬んで食べることです。
口呼吸から鼻呼吸に転換するだけで、健康な家庭が築けるとしたら、この努力はぜひとも実践したいものです。たいしたお金も時間も費やさず、それぞれの持病が治り、体質が改善されます。また、口が開いたままだと、締まりのない表情となり見栄えも悪いものです。今日から、あなたも実践してみて下さい。