21世紀は積極的な健康増進、より総合的な健康を目指す時代と考え『口腔機能と全身』をテーマにしました。
(一社)一般社団法人 十勝歯科医師会 口腔機能研究会
よくかみ、だ液多く出すこと有効
以前成人病といわれていた疾患は数年前より生活習慣病と呼ばれるように
なりました。生活習慣病は加齢とともに等しくかかるのではなく、個人の生き方や習慣により結果が全く違う事から呼び名が変わったのです。
生活習慣病には脳卒中、動脈硬化、がん、糖尿病などたくさんありますが、これらの病気にはいずれも活性酸素が大きくかかわっています。
生活習慣病から身を守るためには活性酸素を消去する必要があります。
活性酸素が体内で発生する原因には、呼吸による酸素と食物が挙げられます。
通常の生活の際にも体内に入る酸素の2%程度が余剰の活性酸素になると言われておりそれが組織や遺伝子などを傷つけ生活習慣病を発生させるのです。
活性酸素のうち、食物由来のものは第5話にありますように、唾液と十分に(30秒間)混ぜ合わせる(咀嚼=そしゃく)ことでほとんど消失します。呼吸により発生するものは、抗酸化剤といわれるポリフェノールやビタミンA・C・Eなどにより消されますが、主役はSOD(スーパーオキシドディスムターゼ)という酵素です。SODは体内で作られ、たえず活性酸素を消去しています。実験の結果、SODの活性を高めるためには、よくかむことが大変有効であることがわかりました。現在、われわれは、ひと口七、八回かむと飲み込んでしまいますが、ひと口三十回かむ事を五日間続けるとSODの活性が約40%も上昇するのです。糖尿病は、膵臓から分泌するインスリンというホルモンの量が不足するか、働きが弱くなるために起こります。長崎大学名誉教授高岡善人博士の研究によると、耳下腺(おたふく風邪の時にはれる、最も大きな唾液腺)から分泌された唾液は、口内に流れ出る前に條紋(じょうもん)部で逆吸収され血液に入ります。血液に入った唾液成分はインスリン作用を発揮し糖尿病を予防することが分かったのです。
すなわち、よくかむ事、そしてたくさん唾液を出す事が多くの生活習慣病を予防し、いつまでも若々しくいられることにつながるのです。